洋楽をよく聴く人は本当に英語の成績が高い⁉︎ 「見せかけの相関関係」とは?
私はアルバイトで高校生に英語を教えているが、生徒のうちの1人がこのようなことを言い出した。
「洋楽をよく聴く人って英語の成績も良いですよね」
ん?果たしてこれは本当にそうなのか?確かに洋楽を聴く人は英語が上手な人が多い気もするが、そうじゃない人も結構いる気がする... 少しこのことについて考えてみたいと思う!
この発言は要するにこういうことを言っている
洋楽を聴く→英語の成績が上がる
(=洋楽を聴けば英語の成績が上がる、つまり洋楽を聴くことは英語の成績を上げる要因である)
この関係が本当に正しければ、英語が苦手な生徒が嫌々でも良いから洋楽を聴けば成績が上がるということになる。ただ実際、洋楽の歌詞には学校教育がカバーする文法事項とは合っていない表現や言い回しが多く使われている。つまり、それを覚えたからと言ってテストの成績が上がるとは限らない。また、メロディを楽しんでいる人も多くいるだろうし、そういう人は別に英語の文法や単語の意味を洋楽からたくさん学び取っているとは言いがたい。
ただ実際に洋楽好きで英語が上手な人はたくさんいる。これはどういう風に説明できるのか?
洋楽を好きな人とはどのような人なのか少し考えてみよう!洋楽が好きということは少なからず外国の物や文化に興味があると言える。文化などに興味があればその文化で使われている言語を学びたいと思うというのは別に不自然なことではない。現に第二言語習得研究という学問分野では「統合的動機付け」と呼ばれる概念がある。統合的な動機付けとはある言語を話す共同体に所属したいと思う気持ちが外国語学習の大きな動機付けになるということを表している。
ここで気づく人もいるのでは!
外国のものや文化に関心がある人は洋楽に興味を持ちやすいし、外国語学習にも身が入りやすいということ!
つまり...
外国のものに関心を持つ→外国語の成績が向上する
外国のものに関心を持つ→洋楽をよく聴く
「外国への高い関心」という第3の要因があり、その要因が英語の成績の向上と洋楽を聴く頻度を上げるという2つの結果を同時に導くということ。つまり洋楽を聞くことが成績を向上させる要因ではなく、「外国への高い関心」という第3の要因が「洋楽を聴く頻度」と「英語の成績の向上」という2つの結果を導き、2つの結果の間に因果関係が成り立っているように感じてしまうということである。ということは洋楽を我慢しながら聴いたところで英語学習が学習が捗るとは限らない!
なるほどこれは興味深い!実はこのような興味深い関係性を表す概念がある!それは
見せかけの相関関係。
因果関係とは以下のような関係性のことを言う
A→B
Aという原因がBという結果を引き起こす。
相関関係とはAとBの値が同時に上昇したり、下降したりする関係性を指す。つまりAが下がれば、Bも下がる、Aが上がればBも上がるということ。
見せかけの相関関係とは以下のような関係性のことである
A’→A
A’→B
AとBの値が同時に上昇しているため、あたかもAがBの原因に見えるが、実際はA’という要因がAとBの値を引き上げているという状態。因果関係に見せかけて実際は単なる相関関係ということ。これはまさに先述した洋楽と英語学習の関係性を表している!
このように一見良さそうに見えるものも実際のところは直接的な原因ではなく、必ずしも効果的なものではない。だからこそ「見せかけの相関関係」を見抜く力が必要になってくる!
※もう少し詳しく「見せかけの相関関係」を知りたいという方には『学力の経済学』という本をオススメします!
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